【連載第2回】経営コンサルタントの仕事を分解してみる
公開日
2025年8月6日
更新日
2025年10月6日
前回は「なぜ2024年に経営コンサルタントが過去最多の倒産を記録したのか」、そして「なぜ管理職にこそ“社内コンサルタント的視点”が必要なのか」というテーマでお話ししました。
今回の第2回では、「そもそも経営コンサルタントとは、どんな仕事をどのような流れで行っているのか?」という基本に立ち返り、それをChatGPTなどの生成AIでどこまで代替できるのかを、各工程ごとに整理してみたいと思います。
この記事の主な内容
経営コンサルタントの代表的な業務フロー
まず、経営コンサルタントの業務は大きく分けて以下の6つの工程に整理できると考えています。
- ヒアリング・現状把握
- 課題の可視化・仮説立案
- 施策検討・戦略立案
- 資料作成・報告
- 実行支援・伴走
- 効果測定・再提案
1. ヒアリング・現状把握
クライアント企業の経営課題や現場の実態、組織構造や数字データをインタビューや観察を通じて把握します。ここでの“気づき”が全体の方向性を決めるため、非常に重要な工程です。
2. 課題の可視化・仮説立案
集めた情報をもとに、課題の構造を整理し、原因や背景要因を明らかにして仮説を立てていきます。3C分析やSWOT分析、バリューチェーン分析などのフレームワークを用いることも多いです。
3. 施策検討・戦略立案
課題に対する解決策の選択肢を提示し、中長期的な道筋を提案していきます。複数の案を出し、クライアントと議論しながら最適な方向性を絞り込んでいきます。
4. 資料作成・報告
提案内容を経営層や現場に伝えるために、報告書やプレゼン資料に落とし込みます。伝わりやすさや納得感が重視され、パワーポイントでの構成力が問われる場面です。
5. 実行支援・伴走
戦略を実際に現場で動かしていくフェーズです。具体的な施策実行のロードマップを作り、進捗管理や壁打ち、ファシリテーションなども含めて、クライアントとともに伴走していきます。
6. 効果測定・再提案
実行した施策の効果を測定し、改善点があれば新たな提案へとつなげていきます。PDCAを回すような形で、継続的な支援が求められる場面です。
生成AIで代替可能な工程はどこまでか?
この一連の流れの中で、ChatGPTのような生成AIで支援できる部分はどこまであるのかを見てみると、次のような傾向があると考えています。
- フレームワークによる仮説構築(例:SWOTや3Cの草案作成)
- 提案施策のアイデア出し(業界横断の知識提供)
- パワーポイントやレポートの下書き生成
- KPI整理や進捗管理フォーマットの作成
- データの要約や改善案の提示
これらは、ChatGPTで対話形式で進めることで、一般社員やマネージャーでも一定の水準で行えるようになってきていると感じます。
一方で、以下のような部分はAIだけでは難しいと考えられます。
- 空気を読む力や相手の表情からの洞察
- 非言語情報の解釈
- 人間関係構築や巻き込みのコミュニケーション
- 現場の温度感をふまえた意思決定
つまり、「構造化」や「見える化」の支援はAIに任せ、「関係性」や「場づくり」は人間のマネジメント力が求められる部分だと思われます。
管理職に求められる“社内コンサルティング力”とは
これまで経営コンサルタントに頼っていた仮説立案や提案資料の作成などを、管理職自らがAIを活用することで、スピーディに行えるようになってきたと感じます。
その分、管理職にとって重要になるのが、“社内コンサルタント的な視点”です。
- 日々の業務の中で、違和感や課題に気づく
- それを言語化し、AIで整理し、仮説を立ててみる
- 解決策の案を複数提示し、チームで議論する
- 組織を巻き込み、行動につなげていく
このような流れを回せる管理職こそ、変化の激しい時代において組織を前に進める力を持つ存在だと考えています。
次回予告:第3回「生成AIで社内課題を分析するプロンプト術」
次回は、実際にChatGPTを使って「社内課題を可視化・分析するためのプロンプトの作り方」について、具体的な例を交えながら紹介したいと思います。
生成AIを使って“考える”力を強化したいと考えている管理職の方に、ぜひ読んでいただきたい内容です。
<文/綱島佑介>




