【ロマ数トレラン】楕円関数論を視野に入れた複素変数関数論 - 基礎と演習
公開日
2025年4月7日
更新日
2025年4月7日

17世紀の終わり掛けにライプニッツにより今日の微積分の原型が発見されたとき、複素変数関数論の萌芽もまたほとんど同時に芽生えました。この理論の形成史をたどると、負数と虚数の対数をめぐるライプニッツとヨハン・ベルヌーイの論争を受けて、18世紀の中ころオイラーによる複素対数の無限多価性が発見されたのは実にめざましい出来事でした。今日の複素変数関数論はこの発見とともに端緒が開かれました。
19世紀に移るとコーシーは複素変数関数の積分を考察し、積分の存在条件を追い求めて関数の正則性の概念をつかみました。複素変数関数論の根底を作るのはこの正則性の概念ですので、発見にいたる経緯をていねいに振り返り、多くの事例を挙げ、問題演習を重ねて理解を深めたいと思います。
コーシーが正則関数の概念を語ったのほとんど同時期にリーマンとヴァイエルシュトラスもそれぞれに独自の言葉でこの概念を語っていますが、この二人の数学者の念頭には代数関数論がありました。代数関数論のはじまりは楕円関数論ですが、その楕円関数論のはじまりもまた複素対数の場合と同様に微積分が発見された時期にさかのぼります。ヤコブ・ベルヌーイによるレムニスケート曲線の発見、ファニャノが創始したレムニスケート曲線の等分理論、オイラーが発見したレムニスケート積分の加法定理を土台として解析学の一領域が新たに開かれました。その領域に対して楕円関数論という呼び名を提案したのはルジャンドルです。
ガウスとアーベルは第1種楕円積分の逆関数に目を留めてルジャンドルのいう楕円関数論に新たな地平を開きましたが、その逆関数の本性の解明が推し進められて「2重周期性をもつ解析関数」の概念に到達しました。そのような属性をもつ関数のことを、今日では楕円関数と呼んでいます。
複素変数関数論の背景にはこのような背景が広がっています。そこで次に挙げる三つの事柄が本セミナーの柱になります。
(1) 複素対数への理解を深める。
(2) 複素積分の存在条件の探究を通じて関数の正則性の概念が把握された経緯を理解する。
(3) 楕円関数論の基礎理論として複素変数関数論の建設が要請された状況を観察する。
これまでのトレランで次のようなテーマを取り上げました。
・高木貞治『解析概論』を味わう
・リーマンの学位論文に学ぶ複素変数関数論
・複素解析の視点からの微積分演習
・複素解析の基礎―留数解析と楕円関数論から一般理論の形成へ
これらのトレランに共通しているのは複素変数関数論です。今回のトレランのテーマも複素変数関数論ですが、これまで語られなかった視点に立ってこの理論の根幹を語ってみたいと考えています。本セミナーで新たに取り上げる事柄を列挙します。
・負数と虚数の対数をめぐるヨハン・ベルヌーイとライプニッツの論争
・ド・モアブルの公式からオイラーの公式へ
・複素対数の無限多価性の論証を支えるオイラーの公式の役割
・複素積分の存在を支えるもの ― モレラの定理再考
・複素対数の積分表示と解析接続の現象の発見
・複素変数関数の解析性の発見
・複素変数関数の不定積分
・複素変数関数の不定積分に基づく定積分の計算
・複素積分から正則関数へ―コーシーの定理とモレラの定理
・オイラーによるオイラーの公式の証明-虚の世界への橋を架ける
・レムニスケートの発見から楕円関数論へ
・レムニスケート関数の虚数等分方程式
・リーマン面の誕生 ― リーマンからヘルマン・ヴァイルへ
受講対象
これから学ぼうとする人、学びつつある人、学び直そうと考えている人など。
セミナー監修
高瀬正仁 (たかせ まさひと)
1951年、群馬県の山村、勢多郡東村(現在、みどり市)に生れる。東京大学卒業後、九州大学大学院に進む。大学院は理学研究科数学専攻。前期修士課程修了。後期博士課程中退。九州大学理学部数学科助手、講師、准教授を経て、基幹教育院教授。2016年、定年退職。
専攻は多変数関数論と近代数学史。オイラー、ガウス、アーベル、リーマンなど、数学の古典の翻訳を続けるとともに、岡潔と高木貞治の評伝を執筆した。
担当講師
※日程により一部講師が変わる事があります。
会場とスケジュール
本編(有料)
オンライン教室第01回 2025年04月20日(日) 14:00~16:30
第02回 2025年05月04日(日) 14:00~16:30
第03回 2025年05月18日(日) 14:00~16:30
第04回 2025年06月01日(日) 14:00~16:30
第05回 2025年06月15日(日) 14:00~16:30
第06回 2025年06月29日(日) 14:00~16:30
第07回 2025年07月06日(日) 14:00~16:30
第08回 2025年07月27日(日) 14:00~16:30
第09回 2025年08月10日(日) 14:00~16:30
第10回 2025年08月24日(日) 14:00~16:30
※最小履行人数は4名となります。最小履行人数に満たない場合、非開催となり、料金は返金させていただきます。開催有無は第一回ゼミの7日前に確定となります。
※ガイダンス回翌日18:00時点での申込数が定員を超えている場合は、抽選にて参加者を決定させていただきます。予めご了承ください。
※本編お申し込みの方にはご入金方法をメールでご連絡いたします。