【ロマ数トレラン】エーリッヒ・ヘッケに学ぶ代数的整数論
公開日
2023年8月26日
更新日
2024年3月1日
複素数の世界における整数論の認識を深め、数論が複素数の世界に移った経緯を紐解く
全10回の講義を通じて、エーリッヒ・ヘッケの著作『代数的数論講義』に沿って代数的整数論の全体像を紹介したいと思います。代数的整数論はいわば「複素数の」整数論」で、その泉はガウスが創造した「4次剰余の理論」ですが、これに先立ってガウスは“Disquisitiones Arithmeticae(ディスクイジチオネス・アリトメチカエ)という大きな著作を出版しています。Disquisitionesは「研究」という意味の名詞の複数形、Arithmeticaeは「アリトメチカに関する」という意味の形容詞で、アリトメチカというのは古代ギリシアに由来する言葉で、「数の理論」という意味ですから、ガウスの著作は「数の理論に関する研究」ということになります。簡潔に「数論研究」と呼んでもよいと思います。以下、D.A.と略称することにします。D.A.が土台になって、その上に4次剰余の理論が構築されました。
ガウスの次の世代のドイツの数学者にディリクレがいて、ディリクレは17歳のときパリに行き、フランスの数学者たちとの交友の中で数学を学んだのですが、パリに向うときガウスのD.A.をもっていました。生涯にわたってD.A.を読み続けたといわれているほどで、後年ガウスの没後ゲッチンゲン大学の教授になったときの講義題目のひとつが数論でした。自分が理解したD.A.を講義したのでした。聴講者の中に私講師になっていたデデキントがいました。デデキントはディリクレの講義を再現して『ディリクレの数論講義』という著作を出版したのですが、初版から第4版まで版を重ねる中でそのつど巻末にデデキント自身の研究ノートを添えました。そこで取り上げられたのが代数的整数論です。デデキントはガウスの4次剰余の理論も承知していて、ガウスの数論全体を包み込むような大きな理論の構築をめざしていました。
代数的整数論は最後に高木貞治先生の類体論が出現して一段落という恰好になりました。類体論のアイデアを提出したのは高木先生の師匠のヒルベルト。そのヒルベルトのもとで数論を学んだのはエーリッヒ・ヘッケで、ヘッケはバーゼル、ゲッチンゲン、ハンブルクの大学で代数的整数論の講義を続けました。その講義録が出版されたのがきっかり100年前の1923年です。その当時の代数的整数論の全容が描かれていて、具体的な数値計算の事例に基づいてていねいに説明されています。代数的整数論への叙説としてもっとも相応しいテキストです。高木先生の著作『初等整数論講義』も適宜参照し、全10回のトレランの終了時には2冊のテキストをほぼ読了した状態になっていることをめざします。
受講対象
これから学ぼうとする人、学びつつある人、学び直そうと考えている人など、数論に関心のあるすべての人びと。
必要な数学知識
特別の前提となる知識はありません。有理整数の数論からはじめて第一歩から解説します。
セミナー内容
・有理整数の数論
・アーベル群
・有理整数の数論におけるアーベル群
・冪剰余と剰余指標
・代数的数と代数的数体
・イデアルと理想数
・イデアル論の基本定理
・有理素数の2次体における分解法則と円分体における分解法則
・基本単数
・平方剰余相互法則と2次体における分解法則
・ノルム剰余と数のノルム群
・任意の数体における平方剰余相互法則
※受講者の理解度により、上記内容は変更となることがあります。
※進行具合により、上記内容が前後することがあります。
セミナーの様子
セミナー基本構成
※内容によっては授業内に演習時間を含める場合がございます
∞セミナーの進め方∞
毎回ノートを用意して講義形式で進めますが、途中で自由に話し合えるようにしたいです。一般理論とは別に、2次体の数論に例を求めて具体的な計算を体験できるように、課題を出すことも考えています。
∞本編受講希望者の方向けの注意事項∞
・通信トラブル等が発生した時に、講師、受講生で円滑に連絡を取り合えるようLINEグループを作成します。LINEグループへの参加は必須とさせていただきますので、予めご了承ください。
・オンラインセミナー受講の際に必要となるパソコン、タブレットまたはスマホ等の通信機器、およびWiFi等のインターネット接続サービスは受講生ご自身でご準備いただきます。
・Apple Pencilなどのスタイラスペンやペンタブなど、画面にペンによる書き込み、描画を行える環境をご準備いただくことを推奨いたします。
・欠席者には録画動画だけでなく、セミナーで使用する配布資料(pdfファイルやurl等)も出席者同様配布いたします。
※開催回ごとに多少構成が変わることがあります。
料金
定員
特定商取引法に基づく表示
セミナー監修
高瀬正仁 (たかせ まさひと)
1951年、群馬県の山村、勢多郡東村(現在、みどり市)に生れる。東京大学卒業後、九州大学大学院に進む。大学院は理学研究科数学専攻。前期修士課程修了。後期博士課程中退。九州大学理学部数学科助手、講師、准教授を経て、基幹教育院教授。2016年、定年退職。
専攻は多変数関数論と近代数学史。オイラー、ガウス、アーベル、リーマンなど、数学の古典の翻訳を続けるとともに、岡潔と高木貞治の評伝を執筆した。
担当講師
※日程により一部講師が変わる事があります。
会場とスケジュール
ガイダンス回(無料)
オンライン教室第0回 2023年09月09日(土) 14:00~15:30
※開催は終了しました。ガイダンス回は「セミナーの様子」からご確認いただけます。
本編(有料)
オンライン教室※募集は締め切りました
第01回 2023年09月23日(土) 14:00~16:30
第02回 2023年10月07日(土) 14:00~16:30
第03回 2023年10月21日(土) 14:00~16:30
第04回 2023年11月04日(土) 14:00~16:30
第05回 2023年11月18日(土) 14:00~16:30
第06回 2023年12月02日(土) 14:00~16:30
第07回 2023年12月16日(土) 14:00~16:30
第08回 2024年01月06日(土) 14:00~16:30
第09回 2024年01月20日(土) 14:00~16:30
第10回 2024年02月03日(土) 14:00~16:30
※最小履行人数は4名となります。最小履行人数に満たない場合、非開催となり、料金は返金させていただきます。開催有無は第一回ゼミの7日前に確定となります。
※ガイダンス回翌日18:00時点での申込数が定員を超えている場合は、抽選にて参加者を決定させていただきます。予めご了承ください。
※本編お申し込みの方にはご入金方法をメールでご連絡いたします。