【ロマ数トレラン】オイラーの数論と平方剰余相互法則
公開日
2022年9月2日
更新日
2024年3月1日
平方剰余相互法則は今日の整数論の根幹を支える基本定理ですが、この法則が発見されて証明されるまでにはさまざまな経緯がありました。なかでもルジャンドルとガウスの確執はよく知られています。ルジャンドルはガウスよりも早く発見し、証明を試みましたが、少し遅れてルジャンドルとは独立に発見したガウスはルジャンドルの証明にきびしい批判を加えて一蹴し、正確な証明に成功した最初の人になりました。ところが19世紀の後半期にクロネッカーの考証が現れて、ルジャンドルとガウスよりも前にオイラーがすでに発見していたことが明らかになりました。しかも三者三様、オイラーもルジャンドルもガウスもそれぞれ異なる動機に誘われて同じ法則に導かれたのでした。このあたりの経緯を詳細に追っていくと、おのずと数論の世界へと深く分け入っていくことになります。
フェルマが遺した数論の命題の中に「フェルマの小定理」と「直角三角形の基本定理」があります。フェルマの小定理はよく知られていると思いますが、最初の証明に成功したのは若い日のオイラーでした。直角三角形の基本定理というのは、
5=1+4, 13=4+9, 17=1+16, 29=4+25, 37=1+36, 41=16+25, …
というように、「4で割ると1が余る素数は二つの平方数の和の形にただ一通りの仕方で表される」という命題です。オイラーはこれを正しく証明しましたが、その証明を支えていたのはフェルマの小定理と平方剰余相互法則の第1補充法則でした。オイラーはここからなお歩を進め、ついに平方剰余相互法則そのものに到達しています。
ガウスは1795年の年初、たまたま平方剰余相互法則の第1補充法則を発見し、それがきっかけとなって数論に踏み込んでいって、Disquisitiones Arithmeticae(ディスクィジティオネス・アリトメチカエ.D.A.と略称。アリトメチカ研究)という大きな著作を出しました。オイラーとガウスは数論の同じ真理を発見したのですが、オイラーが長い探究の最後に到達したのに対し、ガウスの場合にはこの発見が出発点でした。このような現象が現れたのはなぜなのでしょうか。
オイラーとガウスを中心にして、ラグランジュとルジャンドルにも留意しつつ、これらの人びとの論文や著作に沿って数論を具体的に観察したいと思います。
受講対象
数論に関心のあるすべての人びと。特別の前提となる知識はありません。第一歩から解説します。
セミナー内容
具体的な事例を豊富に揃えて数の世界への親しみを深めながら話を進めます。
・フェルマの小定理
・直角三角形の基本定理
・オイラーによる直角三角形の基本定理の証明
・平方剰余相互法則とは
・オイラーによる平方剰余相互法則
・二つの異なる奇素数間の相互法則(ルジャンドル)
・平方剰余の理論の基本定理(ガウス)
・ルジャンドルの記号(ルジャンドル)
・平方剰余相互法則の第1補充法則
・平方剰余相互法則の第2補充法則
・オイラーの基準
・奇素数の線型的形状と平方的形状
・2次形式で表される数の奇素因子の形状
※受講生の理解を深めることを重視しますので、予定内容が変更になる場合があります。
セミナーの様子
料金
定員
特定商取引法に基づく表示
セミナー監修
高瀬 正仁(たかせ まさひと)
1951年、群馬県の山村、勢多郡東村(現在、みどり市)に生れる。東京大学卒業後、九州大学大学院に進む。大学院は理学研究科数学専攻。前期修士課程修了。後期博士課程中退。九州大学理学部数学科助手、講師、准教授を経て、基幹教育院教授。2016年、定年退職。
専攻は多変数関数論と近代数学史。オイラー、ガウス、アーベル、リーマンなど、数学の古典の翻訳を続けるとともに、岡潔と高木貞治の評伝を執筆した。
担当講師
※日程により一部講師が変わる事があります。
会場とスケジュール
第1クール
オンライン教室※好評のうちに終了いたしました
第1回 2022年09月03日(土) 14:00~16:30
第2回 2022年09月17日(土) 14:00~16:30
第3回 2022年10月01日(土) 14:00~16:30
第4回 2022年10月15日(土) 14:00~16:30
第5回 2022年10月29日(土) 14:00~16:30
第6回 2022年11月12日(土) 14:00~16:30
第7回 2022年11月26日(土) 14:00~16:30
第8回 2022年12月10日(土) 14:00~16:30
第9回 2022年12月24日(土) 14:00~16:30
第10回 2023年1月14日(土) 14:00~16:30
※同内容を個別指導にてご受講ご希望の方はご相談に応じます。まずは、お気軽に「無料カウンセリング」にご参加ください。